当会計事務所に寄せられた法人税の節税に関する質問とその回答です。
(回答者:公認会計士・税理士 伊藤誠一)
<質問>
当社は繊維製品の製造を行う会社です。生産の一部を子会社に外注し、製造設備である機械及び装置をその子会社に賃貸しております。
近年、需要の低迷から本社の工場のラインを縮小しておりましたが、今期になって受注量が急に回復し子会社では超過操業の状態が続いております。
この場合、機械の賃貸人である当社が機械装置について、増加償却を行うことは可能でしょうか。
また、可能であればどのような手続きが必要でしょうか。
<回答>
貸与している減価償却資産の耐用年数は、耐用年数通達の別表に貸付業務用として特掲されているもの(例えば、貸自動車業つまりレンタカー会社用の車両等)を除き、原則として、貸与を受けている者の資産の用途などに応じて判定することになっております。
増加償却についても同様の解釈をするものと考えられますから、貴社において増加償却を行うことは下記のすべての要件を満たせば、可能と考えてよいかと思われます。
増加償却の適用を受けるためには、
1.機械及び装置であり、減価償却方法は定額法又は定率法を採用していること。
2.増加償却割合が10%以上であること。
※増加償却割合とは、35/1000×当該事業年度におけるその機械及び装置の一日当たりの超過使用時間(小数点以下2位未満の端数は切り上げ)
なお、一日あたりの超過使用時間は、次の時間のうちその法人が選択したいずれかの時間をいいます。
@個々の機械及び装置の当該事業年度における1日当たりの平均超過使用時間×(当該個々の機械及び装置の取得価額/当該機械及び装置の取得価額)
A当該機械及び装置に属する個々の機械及び装置の当該事業年度における1日当たり平均超過使用時間の合計額÷当該期末における当該個々の機械及び装置の総数
3.申告書の提出期限までに所轄税務署長に所定の届出書を提出するとともに、超過使用したことを証する書類を保存していること。
これら上記の所轄税務署長に提出する届出書は増加償却を実施しようとする事業年度毎に提出しなければなりませんので、注意が必要です。
増加償却の要件として、超過使用をしたことを証明する書類の保存が必要とされていますが、子会社に所在する機械及び装置の使用時間を貴社において記録し、管理する必要があります。
また、子会社においても、同様に製造設備である機械及び装置の使用時間の記録を残し、増加償却の要件を満たす超過使用時間にあることを証明する資料を整える必要があります。